|
狗と歩けば〜the Xmas story "Shiro Emiya" |
「士郎、どこに行くんだ?」 玄関先での物音に反応したランサーが、出かける支度をしている士郎に声をかける。 「ん? 商店街に買出し。今日からクリスマス特売だからさ」 「クリスマス? ああ、町じゅうの『らぶほてる』が一杯になるってアレか?」 そんなランサーのツッコミに思わずコケる士郎。 「一つ聞きたいんだけどさ、ランサー?」 「何だよ」 「お前、ラブホテルって何だか知ってんの?」 「いや。テレビで言ってた」 その答えにどう返そうか士郎が迷っていると、豹のように足音を立てずに―――こういう歩き方しかできないらしい―――近寄ってきたランサーが三和土に降りてくる。 「オレも行く」 「え? お前は家でじっとしてろよ」 半人前の魔術師である士郎と魔術回路を繋げられないランサーは、魔力の減りを抑えるために戦闘以外では魔力の装甲を纏うこともない。また睡眠も食事も人間と同様に摂取することで魔力へと変換している。せっかく休ませているのに荷物持ちをさせることになってしまったら、それこそ大変だ。そう思った士郎が止めようとしたが、 「ふーん、この間襲われかけて結局手間を取らせたのはどこのどいつだったか、ん?」 からかうような、それでいて真剣さをチラつかせたランサーの台詞にぐうの音も出ない。 「最初から同行して魔力装甲を纏うのと、魔力装甲を纏った後で走るのと、どっちが……」 「分かった、分かったから!」 結局、反論らしい反論をさせてももらえなかった士郎が折れた。 「お、シロちゃん。ホームステイの友達と一緒かい?」 馴染みの肉屋のオヤジさんから声をかけられ、生返事をする士郎。一度こうやって一緒に買い物に来た際に、実体化したランサーを連れていたら「どういう関係か」と聞かれたので「オヤジの知り合いの外国人を滞在させている」という苦しい言い訳に落ち着いた。実際、ランサーの外見はどう見ても白人としか言いようがないのだから。 「あと、クリスマス用のチキンを」 「いつものヤツな。ちゃんと確保してあるよ!」 てきぱきと買い物をする士郎を見ながら、一応釘をさしておくランサー。 「士郎、犬の肉は買うなよ」 「んなもん、日本にあるかー!」 「あとケーキ屋行って……ランサー、何か食べたいものあるか?」 肉屋八百屋とハシゴして、スーパーの横を通り過ぎて尋ねる士郎。既にマイバッグだけでは収まりきらず、肉屋のロゴの入ったビニール袋を下げている……ランサーが。 「いや…特にねえよ。お前料理上手いから、何食べてもうめえし」 「……欲がないな」 「いや、欲ならあるぜ」 思わず立ち止まった士郎から半歩だけ進んで、ランサーも歩みを止める。 「それって……」 「……わかってんだろ」 彼が英霊となった理由。 つまりは死力を尽くした「戦い」そのもの。 けれど、実際のところはどうだ。半人前の自分を主に戴いたことで、ランサーは死力を尽くすどころか日々の魔力を節制する生活を強いられている。 「…………」 言葉を無くしてしまった士郎に、ランサーは明るい調子で言う。 「そんなに深く考えんなよ」 「けど……」 どれだけの時間を無駄にしたことだろうか。現世に呼ばれてこの方、おそらく彼は身体を維持するのが精一杯で、槍を合わせてもいない。それどころか、他のサーヴァントとの小競り合いでは彼自身と言っても過言ではないその朱色の魔槍を封印したまま、体術やらルーン魔術やらで最小限の戦闘しか行っていない。 「…………」 黙りこんでしまった士郎のくせのある髪にその白い手を伸ばしたランサーは、わしわしと髪をかき混ぜるようにして頭を撫でる。 「な、何すんだよっ!」 「ばーか! 考えすぎなんだよ、お前」 自己嫌悪に陥ってしまった士郎を見つつ、ランサーは思う。 確かに召喚されたばかりのころは苛立ちもあった。けれど、毎晩の魔術の鍛錬を欠かさず、努力し続ける士郎の姿は、ランサーにとって好ましさすら感じさせた。たかが人間、と侮っていた気持ちを改めるに値するものだった。 「足掻いて、着実に力をつけていくお前の姿は見ていて気持ちがいい」 「へ?」 何を言われているのか分からない士郎は、ただ呆然とランサーの顔を見上げる。そんな士郎の間が抜けたような表情を見て唇の端に笑みを湛えたランサーは、くるりと向きを変えた。 「ほら、さっさとケーキ屋行くんだろ」 いたずらっ子のような人の悪い笑みで顔だけを士郎に向けてそういうと、ランサーは音もなく歩き出した。 「ま、待てよ! 荷物半分持つから!」 「で、結局……」 居間のテーブルにはケーキやチキンの丸焼きなど豪華絢爛なメニューが山となっている。しかし…… 「遠坂は冬木教会の手伝いに借り出されて、桜は家での行事。おまけに藤ねえまで舎弟さんたちと……」 まさかキリスト教の行事に寺の息子である一成を呼ぶのも変だろう、というわけで月見の時と同様の男2人の薄ら寒いクリスマス。いや、これに一成が加わっていたら男3人のますますもって吹雪が吹くような状態だっただろう。 「あー、知ってるぜ、こういう状況。『男夫婦』って言うんだよな!」 「だから、変な言葉を覚えてくるなー!!」 ……取り合えず、ランサーにはテレビ禁止令が出されたとか。 ・END・ まさにやってることが夫婦漫才ですよ、士郎&ランサー(笑)。狗の肉はね…中国とか行けばあるだろうけど、日本にはないから安心して食べて下さい>クーフーリン。多分、衛宮さん家はエコロジックにマイバック標準装備。多分遠坂さん家もそうなってるはず>弓がな。 |